企業の規模にかかわらず、国外に事務所を設置するのは大変なことです。しかし、見知らぬ土地でも案内役がいれば、大きな助けになりえます。アイルランド政府産業開発庁は単なる投資の促進や受注に留まらず、企業の進出初日からパートナー、良き協力者、気の利くコンシェルジェとなるよう努めています。
IMDはアイルランドを投資優遇措置で世界第2位にランク付けしていますが、これは全体像の一部にすぎません。アイルランド政府産業開発庁職員が提供する支援やサポートが業務を超えたものであるという話は枚挙にいとまがありません。
アイルランド政府産業開発庁の担当部署は、企業の事務所探しや製造施設の下見をサポートするのに加え、人材派遣会社、会計事務所、法律事務所など進出に不可欠な専門サービスの紹介も行ないます。優秀な人材の宝庫であり研究開発協力の道筋ともなる地元大学への紹介も行います。
WP Engineの創業者、Jason Cohen氏は、アイルランドには海外進出する企業に歓迎される秘訣があることを信じて疑いません。「アイルランド政府産業開発庁は進出前後双方で非常に大きな助けとなってくれましたが、「進出後 」が極めて重要だと思います。まさにパートナーシップが発揮されるのはそこですが、どこでも得られるものではありません。米国都市部にもそんなところはなく、テキサス州オースティンですら、そこまではしてくれません。こういうパートナーの存在が大きな意味を持つのです」
Scott Herren氏は、ソフトウェア会社Autodeskが2018年に欧州統括本部をスイスからアイルランドに移転した際に同社の最高財務責任者を務めていました。 アイルランド政府産業開発庁がアイルランドに拠点を置く法律事務所を紹介したことで法人設立ができ、現在もガバナンスの支援を得ています。また、アイルランド事務所の人材確保の支援に人材派遣会社も紹介しました。
サイバーセキュリティとコンプライアンスのスタートアップ企業であるVantaは2022年にアイルランドに進出しました。Vantaの国際部門責任者であるPaulo Rodriguez氏は、それまで使っていた米国の給与管理会社との間で問題が生じた時にアイルランド政府産業開発庁が助けを買って出たと言います。「ベンダー3社を紹介してくれ、たった2日で問題を解決しました。困ったときにマジックのように問題を解決してくれます」とRodriguez氏は語ります。
MITが、アイルランドの企業が関与したプロジェクトのために未来工場と人中心のものづくりについて研究した際、驚くべき発見がありました。その発見とは、アイルランド独特の協調的な働き方で「家族文化(clan culture)」と呼ばれます。通常であれば互いに競合するはずの組織が、顔を合わせてベストプラクティスやアドバイスを共有しているというのです。
「一緒に非常にオープンに仕事をしようという文化なのです」と、Digital Manufacturing IrelandのCEO、Domhnall Carroll氏は言います。「環境が違えばプロジェクト管理でも『こっちはこっち、あっちはあっち』と線引きをしますが、アイルランドではたいてい『一緒に成功するんだ』となるんですね。
「私たちは常に世界を舞台に仕事をしていますから、成功するための最善策は、可能な限り最高の知識を得ることとなります。MITの研究者らはこの点を指摘しました。差別化要因を探していたり、調査や研究の成果として指摘したのではなく、他の国にはないことなのだと言っていました」とCarroll氏は言います。アイルランド政府産業開発庁も同じアプローチを採っており、クライアント企業のアイルランド進出に向けた初期コンタクトから契約締結まで迅速に効率的にサポートし、その間にクライアント企業の信頼を築いています。
アイルランド政府産業開発庁のMichael Lohan長官は次のように付け加えます。「アイルランド政府産業開発庁は、初期コンタクトから取引締結までを迅速かつ効率的に導くことに長け、この過程で信頼を醸成します。経験豊富なプロフェッショナルの専門知識を活用し、シームレスな投資判断ができるよう協議とアイルランドへの歓待を円滑に進めるのがユニークな点です」